美と健康

BEAUTY AND HEALTH

活性酸素と抗酸化物質

抗酸化物質とは何でしょうか?

その前に『活性酸素』の話をいたしましょう。活性酸素、という名前自体は、一度は聞いたことがあると思います。でも実体については、ご存知ない方も多いはず…ここでは活性酸素、とそれに対して作用する抗酸化物質について詳しく見ていきたいと思います。

活性酸素とは?

一言で言うと、酸素がより活性(反応性)の高い物質に変化したものの総称、です。 私たちは生きるために酸素を必要とします。それは、酸素自体が大きなエネルギーを持っており、それを利用することで効率よくエネルギーが得られるからです。しかし、私たちの代謝系も完璧ではなく、酸素のエネルギーを利用しきれないときもあります。そのときに副産物として生成されるのが活性酸素です。一般的には次のようなものが活性酸素として知られています。

  • スーパーオキシドアニオンラジカル(スーパーオキシド)
  • 過酸化水素
  • ヒドロキシルラジカル
  • 一重項酸素

これらの活性酸素は、反応性に富み(化学反応を起こしやすい)生体内の、脂質、炭水化物、タンパク質などの様々な物質と反応し、酸化させます。この反応は、鉄が空気に触れて「さび」が生じるのと同じ類の反応です。つまり、体内に「さび」ができているとも表現できるでしょう。この体の「さび」は、体の老化や、がん、脳梗塞、心筋梗塞などの様々な疾患と関係しているのです。

活性酸素の発生と生体防御機構

スーパーオキシドは前述したように、呼吸により酸素からエネルギーを取り出すときに副産物として生じます。また、そのほかにも白血球が微生物を殺す際の武器としても用いられます。このようにして体にスーパーオキシドが蓄積していくと、過剰になったスーパーオキシドが核酸や脂質を酸化させ、DNAの損傷を起こしたり、動脈硬化の原因となる過酸化脂質を生成したりします。

スーパーオキシドの酸化反応を防ぐため、生物はあらゆる防御手段をあらかじめ持っています。スーパーオキシドは、スーパーオキシドジスムターゼという酵素によって分解され、酸素と過酸化水素に分けられます。過酸化水素の反応性は大きくはないですが、それでもなお有害と言えます。この過酸化水素が、カタラーゼという酵素によって、水と酸素に分解されて、無毒化が完了します。

しかし、一部の過酸化水素は体内の鉄イオン、銅イオンと反応してヒドロキシルラジカルとなります。このヒドロキシルラジカルは、活性酸素の中でも最も反応性が高く、生成すると即座に周囲の物質を酸化します。スーパーオキシドと同じく、DNAの損傷、過酸化脂質の生成を招くほか、タンパク質なども酸化させます。活性酸素が引き起こす障害の多くに関わっているのがこのヒドロキシルラジカルです。もしろん生物にはこれを無毒化する仕組みも備わっています。グルタチオンという酵素がヒドロキシルラジカルを水に変えてしまうのです。

また、一重項酸素は紫外線により酸素がエネルギーを得て生じます。これも他の活性酸素と同じく、過酸化脂質などの生成に関与しておりあらゆる疾患の原因になります。また、紫外線により肌で発生するため、エラスチンやコラーゲンなどの肌の質に関わるタンパク質を損傷し、肌の老化に関わります。一重項酸素の無毒化には、食事から摂取したカロテノイド類が関わっています。

抗酸化物質

体をむしばむ活性酸素に対抗するべく、生物には多くの防御機構が備わっています。しかし、活性酸素が大量に存在するとその処理能力を超えてしまい、余った活性酸素が細胞を障害していきます。 生物が処理しきれなくなった活性酸素の処理に有効だとされているのが、食物から摂取することができる抗酸化物質です。抗酸化物質は、自らが活性酸素と反応することで、体が劣化するのを防いでくれる、いわば『身代わり』としての役割を果たしてくれます。

代表的な抗酸化物質には大きく分けて次のようなものがあります。

  • ビタミンC
  • ビタミンE
  • カロテノイド類
  • ポリフェノール類

これらはそれぞれ、主に反応する活性酸素や、水に溶けるか、脂に溶けるか、などの性質が異なります。

  • ビタミンC→水溶性 ヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドを捕捉
  • ビタミンE→脂溶性 ヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドを捕捉
  • カロテノイド類→脂溶性 一重項酸素を捕捉
  • ポリフェノール類→水溶性 ヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドを捕捉

カロテノイド類、ポリフェノール類というのは総称で、様々な種類のものがあります。代表的なものでは、カロテノイド類には、ニンジンに多く含まれるβ-カロテン、トマトに多く含まれるリコピン、ミカンに多く含まれるβ-クリプトキサンチンなどがあります。また、ポリフェノール類には、ブドウに多く含まれるアントシアニン、大豆に多く含まれるイソフラボン、ウコンに多く含まれるクルクミンなどがあります。

抗酸化力は食品中のあらゆる成分がもっており、ある成分の含量を見て抗酸化力を測ることが難しいため、この抗酸化力を測定する指標として、ORAC値というものがあります。

ORAC値について

ORAC値は、1992年米国の国立老化研究所のメンバーによって開発された評価手法によって測定された、抗酸化力を総合的に考慮した値です。この値が大きいと、活性酸素を捕捉する力が大きく、体を酸化から守ってくれる能力が高いと考えられています。 2007年には、米国農務省があらゆる食品のORAC値のデータベースを出しました。これにより、ORAC値は米国では抗酸化力をはかる指標として、広く市民権を得ました。

問題点

このORAC値、総合的に抗酸化力を測定できるという点は素晴らしいですが、いくつかの問題点があります。

①ORAC値は試験管内での実験結果であり、これが実際に人体の健康に寄与するか不明であること
②カロテノイド類の抗酸化性は測定できないこと
③食品の状態が明らかに違うものでの測定結果が混在している(乾燥食品、生鮮品など)こと

などです。

①に関しては、あらゆる食品成分の実験について言えることだと思いますが、そのとおりです。食事から摂取した場合、唾液、胃液などの影響、腸内細菌による代謝など様々な影響を受けて小腸から吸収される(吸収されない場合もあるでしょう)と考えられます。よって、試験管の中での結果だけでは、人体への影響はまだまだわからない、といったほうが懸命です。実際、米国農務省は、ORAC値の高い食品が、人体にはそれほど影響がない、といったいくつかの実験結果や、栄養食品の宣伝などに、よく理解されずに用いられ消費者を混乱させる、といったいくつかの理由をもとに、ORAC値のデータベースを取り下げています。

②について、一重項酸素の捕捉と、そのほかの活性酸素の捕捉では、原理が異なります。そのため、主に一重項酸素の捕捉を担うカロテノイド類の抗酸化力は反映されにくいのです。そのため、カロテノイド類を主に成分に含む、トマト、ニンジンなどでは抗酸化力の指標としてORAC値を用いることはあまり意味がないかもしれません。

③について、ORACは基本的に食品100gあたりの値ですが、水分の少ない食品では、結果的に成分が濃縮された状態になるので、ORAC値は大きく出ることが多いです。現に、ORAC値の大きい食材とされているものは、粉末や乾燥食品、ナッツなどの水分の少ないものが多いです。

私たちは、これらの問題点を把握した上で、現時点では、抗酸化力の指標としてORAC値を用いることにしています。試験管内での結果とはいえ、これだけ一般的に浸透し、データベースの豊富な指標は少なく、その意味で有用だと考えているためです。また、試験管内での結果とはいえ、人体に何の影響も及ぼさないとは考えにくいためです。このあたりは推論になってきますので、深堀りはしませんが、上記の問題点を踏まえたうえでORAC値をどうとらえるかは、今の時点では個々人の判断によるでしょう。

抗酸化力の測定については、現在研究が進んでいるところで、まだまだわからないことが多いのです。私たちもできる限り情報を集め、キャッチアップして、皆様のためになるようお伝えできるように努力いたします。

まとめ

  • 活性酸素は体をさびつかせ、老化や多くの疾患の原因になる!
  • 抗酸化物質は「身代わり」となって活性酸素から体を守る!
  • ORAC値は抗酸化力の指標!抗酸化力の評価は研究が進んでいる最中!