美と健康

BEAUTY AND HEALTH

私たちの体を絶えず流れる血液。 それは私たちには必要不可欠な存在です。 息を吸うことによって豊富な酸素を含んだ血液が、心臓によって押し出され、しなやかな血管を通り、毛細血管まで達し、全身にくまなく酸素を運びます。また、腸からの血液が合流すると、さまざまな栄養素が全身に供給されます。 血は、私たちの生命の源なのです。

このように、血は私たちにとってとても大事なものですが、近年私たちの血は危機的な状態にあると言っても過言ではありません。 日本人の死因の1位はがん、2位は心臓病、3位は脳卒中ですが、心臓病、脳卒中はともに、血液、血管の疾患です。これらの疾患を引き起こすのが、動脈硬化という現象です。動脈硬化はたとえ進行中でも自覚症状が出にくく、ある日突然やってくるように発症します。その様子から、動脈硬化は『サイレントキラー(沈黙の殺人者)』と言われ、恐れられています。 実際、統計によると、日本人の20%が動脈硬化を原因とする疾患で命を落としています。

血を健康に保つことがいかに重要か、裏を返せば、血の健康をないがしろにすることがいかに恐ろしいことかが理解できたかと思います。

これを改善するには、良質なタンパク質や、ω-3系脂肪酸を積極的に摂取し、減塩に努めること、また、カリウム、鉄、ビタミンA、ビタミンC、葉酸、ビタミンK、食物繊維、抗酸化物質、を野菜からしっかり摂取することが重要です。以下より、血液、血管に対する理解を深めるため、その役割を詳しく見ていきましょう。

血とは?

血の役割には大きく分けて3つあります。

  • 酸素、栄養素、老廃物などの物質の運搬
  • 免疫や、止血による生体の防御
  • 体温調節、水分調節などによる体内環境の維持

血液中には主に、赤血球、白血球、血小板、血漿といった成分が含まれ、それぞれ重要な役割を果たしています。

血液の役割

また、健康を語るうえでは血液だけでなく、血管もまた重要です。血管には大きく分けて動脈、静脈、毛細血管があります。心臓から送り出す血液を流す血管が動脈で、心臓に返ってくる血液を流す血管が静脈ですが、これらは、内膜、中膜、外膜、という3層構造になっています。このうち、中膜にはエラスチン、コラーゲンというタンパク質が多く含まれています。この2つのタンパク質は血管の性質に重要な役割を果たしており、エラスチンは弾力性を、コラーゲンは頑丈さをそれぞれ血管に与えています。血管の強度やしなやかさはこの2つのタンパク質のバランスで決まっているとされます。すなわち、正常な、しなやかな血管にはエラスチンが多く、コラーゲンが少ない状態となっているのです。

物質の運搬

酸素の運搬は、赤血球が担い、二酸化炭素や栄養素などの運搬は血液中の液体成分である血しょうが担っています。この、物質の運搬機能こそが血液のもっとも大事な役割といえるでしょう。私たちが生きていられるのは、血液によって絶えず全身に酸素や栄養素が供給されているからに他なりません。赤血球はくぼみのある円盤のような形をしており、ヘモグロビンというタンパク質を持つおかげで酸素を運搬することができます。また、赤血球は核を持たないことにより、自身の形を大きく変えることができます。これによって、細かく張り巡らされた毛細血管の隅々まで酸素を送り届けることができるのです。また、タンパク質、脂質、糖類などの主要な栄養素のほか、ナトリウムや塩素などの、酸素以外のあらゆる成分の運搬は、液体成分である血しょうに乗って全身にはこばれています。

生体の防御

血液中の免疫は白血球が担っています。白血球にもいろいろな種類のものがあり、それぞれ、ウイルス、細菌などの侵入者を捕食したり、抗体という武器を生産してこれら侵入者に対抗したり、これら免疫細胞の指揮をとったりなど様々な役割を果たすものがあります。

また、止血により、血液の体外への流出を防ぐ役割は、血小板が担っています。血管が傷つくと、血管の内側にあるコラーゲンが露出しますが、血小板はこのコラーゲンをいち早く認識し、そこに血小板を集めてきて止血が完了します。さらに、血液中には、血液の凝固因子というものが多種類存在し、血小板だけでは出血を防ぎきれないときに活躍します。血液の凝固因子の多くはビタミンKを必要とするタンパク質であるため、ビタミンKは血液の凝固に深く関わっています。

体内環境の維持

血液や血管は、体温の調節や、体内の水分量の調節など、体内環境を一定に保つのに貢献しています。例えば、寒さで唇が紫色になったりするのは、血液から熱が出て行くのを防ぐため、血管が収縮して、唇の血の流れが一時的に悪くなっているためです。同様に、暑いときには血液から熱を逃がすため、血管は拡張します。また、体内の水分量の調節には、アルブミンというタンパク質や、ナトリウムなどが関わっています。これらの物質により、血液の浸透圧が調整され、血中や、他の組織中の水分量が一定に保たれているのです。

血が悪化すると?

血管と血液を、川に例えてみましょう。血管が堤防、血液は川の水です。何らかの影響で、堤防がもろくなってしまったら、川の水の圧力によって、堤防が壊されてしまうかもしれません。また、川の水や、堤防そのものにゴミがたまるなどして、川の通り道が狭くなってしまったら、水圧が上がってまたしても堤防が破壊されてしまうでしょうし、さらには通り道がつまって川の水が滞るこということもあるかもしれません。血管と血液にも同じことがあてはまります。

「血管の老化」と言われる、動脈硬化は次のように起こります。 血管の内側にある、内皮細胞が傷つくと、そこからコレステロールが侵入します。こうして血管の内側に侵入したコレステロールが、活性酸素により酸化コレステロールとなります。この酸化コレステロールは、そのままにしておくと周囲の細胞を傷つけるため、マクロファージがこれを除去しますが、酸化コレステロールが過剰に存在すると、酸化コレステロールを取り込みすぎたマクロファージがブヨブヨになり機能しなくなります。こうしてできる血管のコブがプラークで、血管が狭くなる原因となります。 さらに、プラークによって引き起こされる高血圧によって血管の内壁はさらに傷つきやすくなります。血管はダメージを防ごうと、血管の強度を高めようとします。すなわち、血管を頑丈にするためにコラーゲンを作るのです。これにより、血管内のエラスチン、コラーゲンのバランスが乱れ、その場しのぎの頑丈さはあってもしなやかさがなく、もろい構造になってしまいます。

こうして、何かしらの要因でプラークが破れてしまうと、血小板がそこに集まり、固まることで破れた部分を修復しようとしますが、これによりさらに血管が狭くなります。こうしてできるのが血栓で、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。 また、高血糖も血管にダメージを与えます。血糖とは血液中のブドウ糖のこと指しますが、これが大量に存在する状態が、高血糖です。高血糖になると、血液中の糖が、血管を構成するエラスチンやコラーゲンと反応し、それらを変性させ、血管の弾力性を損ないます。さらに、高血糖は活性酸素を発生させる酵素を活性化させ、活性酸素を増加させるといい報告もあり、これによってさらに血管はもろいものとなっていきます。

血液、血管を改善するには?

血液や血管にはほとんどの栄養素が関わっています。このことが血液、血管の重大さを物語っています。

中でも、大切なものをピックアップすると、

  • 良質なタンパク質
  • ω-3系脂肪酸
  • 減塩

また、野菜から多く得られる栄養素としては、

  • カリウム
  • 抗酸化物質
  • ビタミンC
  • 葉酸
  • ビタミンK
  • 食物繊維

が血液の改善に役立ちます。以下でその働きを見ていきます。

良質なタンパク質

タンパク質とは、私たちの体の主要な構成成分となっている物質で、生体内のあらゆる物質はタンパク質でできています。もちろん、血管や血液も主成分はタンパク質なので良質なタンパク質を十分に摂取する必要があります。 では『良質』とはどういう意味でしょうか?

タンパク質は、20種類あるアミノ酸という物質がたくさん集まってできた物質なのですが、アミノ酸の中にはヒトが作り出せず、他から摂取しなければならないものがあります。これを『必須アミノ酸』と言いますが、『良質』なタンパク質とは、この必須アミノ酸を多く含むタンパク質のことです。アミノ酸スコアという指標を用いれば、これを知ることができます。つまり、アミノ酸スコアが高ければ(100に近い)そのタンパク質は『良質』だということが言えるのです。以下に、主要な食品のアミノ酸スコアを掲載します。

やはりこれには動物性のものが多いです。もし、植物性のタンパク質だけで高いアミノ酸スコアを達成したい場合は、大豆製品と白米を同時にいただきましょう。双方で足りない必須アミノ酸を補いあって、結果的に高いレベルの必須アミノ酸を補給することができるのです。

アミノ酸スコアリスト

ω-3系脂肪酸

生物の細胞膜の構成成分として、リン脂質という脂質が含まれていますが、これは次のように、脂肪酸を含んだ構造を持っています。

ω―6脂肪酸や、ω―3脂肪酸は生物に取り込まれると、このリン脂質の構成成分となりますが、ω―6脂肪酸の多い細胞膜は硬直化し、ω―3脂肪酸の多い細胞膜は柔軟化することが知られています。血管壁の細胞や、赤血球などの細胞にももちろん細胞膜はありますので、ω―3脂肪酸を積極的に摂取することで、これらの細胞の細胞膜が柔らかくなり、動脈硬化を防いだり、血行を促進したりする効果があります。

リン脂質の構造

減塩

食塩は塩化ナトリウムが主成分ですが、ナトリウムは体内の水分量の調節に関わっています。ナトリウムを摂取すると当然血中にナトリウムが流れ込みますが、私たちの血中ナトリウム濃度は一定になるようにできています。水を血中に送り込むことで、血中ナトリウム濃度を下げ、一定にしているのです。このため、ナトリウムを過剰に取りすぎると、血流量が大きく増加し、高血圧を招いてしまうのです。また、過剰に摂取したナトリウムは血管の筋肉に移行し、血管を収縮させる働きもあります。これにより高血圧がよりエスカレートするのです。 以上のことから、血を健康に保つためには減塩が欠かせません。高血圧予防の観点からは一日に6g未満が推奨されています。以下に、主な食品の塩分リストを掲載します。

カリウム

カリウムはナトリウムと共に体内の水分量の調節に関わっているとされています。過剰に摂取したナトリウムは、腎臓から排出されますが、このときナトリウムはカリウムと一緒になって排出されるという性質を持っています。このため、カリウムが不足してしまうと、ナトリウムがうまく排出できずに高血圧の原因となってしまいます。カリウムとナトリウムのバランスをとることが重要です。カリウムを多く含む食品には、ホウレンソウや、サツマイモ、サトイモなどがあります。

鉄は赤血球の中にある、ヘモグロビンという酸素を運ぶためのタンパク質が働くのに必要になります。このため鉄が欠乏するとヘモグロビンがうまく働くことができず、酸素が足りない状態になってしまいます。これが、鉄欠乏性貧血の仕組みです。鉄を多く含む食品には、動物の肝臓(レバー)や、大豆などの豆類があります。

抗酸化物質

活性酸素によって血液、血管がダメージを受けるのを防ぎます。代表的なものに、ニンジンに多く含まれるβ-カロテン、ブドウやブルーベリーに多く含まれるアントシアニンや、トマトに含まれるリコピンなどがあります。また、ビタミンCは抗酸化物質としても作用することが知られています。

葉酸

葉酸はDNAの合成に深く関わっています。よって、葉酸が不足すると、DNAの合成に異常をきたし、身体に様々な悪影響を及ぼします。血液との関連から見ると、赤血球が作られるときには赤芽球という細胞がつくられたあと、そこから赤血球が作られますが、赤芽球は成熟するのに細胞質の成長とDNAの合成を繰り返します。しかし、葉酸が足りなくなると、DNAの合成が細胞質の成長に追いつかず、異常な形態になります。これを巨赤芽球といい、貧血の原因となります。葉酸の補給や、葉酸と協調してはたらくビタミンB12の補給で巨血芽球による貧血を防ぐことができます。葉酸は、野菜全般に多く含まれていますが、特に、エダマメ、芽キャベツ、パセリ、アスパラガスなどに多く含まれています。また、動物のレバーにも多く含まれています。

ビタミンK

ビタミンKは血液の凝固に関連しており、不足すると出血が止まりにくくなります。また、骨の形成にかかわるタンパク質であるオステオカルシンや、動脈壁などのカルシウム濃度を制御する働きを持つマトリックスGlaタンパク質の活性化にビタミンKが関わっています。血中のカルシウム濃度が大きすぎると、体が血中のカルシウム濃度を一定に保とうと、血中のカルシウムを固まりにしてしまい血中から排除します。これが血管の石灰化で、高血圧や、血行不良を招きます。

しかし、ビタミンKが十分に存在するとオステオカルシン、マトリックスGlaタンパク質が活性化し、血中のカルシウムがコントロールされ、血管の石灰化を防いでくれるのです。 また、活性化されたオステオカルシンは血糖値を下げる働きのあるインスリンというホルモンの分泌を促す働きがあります。これにより高血糖を防ぐことが期待できます。

ビタミンKの役割

食物繊維

食物繊維は、小腸に停滞し、糖にとっての障害物となることで糖の吸収速度をゆるやかにする働きがあります。糖の吸収速度がゆるやかになることで、血糖値の上昇がゆるやかになり、高血糖を予防することができると言われています。

まとめ

長いお話でしたが、まとめます。

  1. 良質なタンパク質、ω-3系脂肪酸、鉄、葉酸で、健康な血管、血液をつくる!
  2. 減塩や、カリウム摂取、抗酸化物質、ビタミンKで高血圧を防ぐ!
  3. 食物繊維、ビタミンKで高血糖を防ぐ!

血液、血管から美しさを磨いて健康美を手に入れましょう。