美と健康

BEAUTY AND HEALTH

腸は第二の脳とも言われ、私たちの精神に大きく影響を受けています。また、第二の脳、というだけあって、実に様々な働きをするとても重要な臓器なのです。この、腸の様々な働きを支える存在があります。それが『腸内細菌』です。彼らなくしては、腸について語ることはできないでしょう。

腸内細菌にはいろいろな種類のものがいます。腸の健康を得るためには、多様な腸内細菌をバランスよく保つことが重要です。それを達成するのが、食物繊維、抗酸化物質、オリゴ糖、マグネシウム、ω-3系脂肪酸、ビタミンDなどの栄養素です。また、ストレスをためないことも腸にとっては重要です。よく笑い、よく遊ぶことは、腸に健康をもたらします。

現在、女性でもっとも死亡率の高いがんは、大腸がんです(男性でも3位)。また、ストレスに起因する、過敏性腸症候群なども最近急増している腸の病気です。これらの疾患が増加する一因に、腸への正しい理解がなされていないことが挙げられるでしょう。腸への理解を深めるため、腸について、どのような役割を果たしているのか、悪化するとどうなるのか、など詳しく見ていきましょう。

腸とは?

人間の腸は小腸、大腸に分けられ、食物に含まれる栄養素の吸収や水分の吸収を担っている。一昔前、腸についてわかっていることはこの程度でした。しかし、近年の研究により腸は私たちの美や健康にとって、とても大事な臓器だということがわかってきました。近年わかってきた腸の役割をいくつか列挙してみましょう。

  • 免疫力の要
  • 有害物質の排出
  • 各種神経伝達物質の合成
  • 短鎖脂肪酸、各種ビタミンの合成

意外だったでしょうか?このような腸の働きには、腸内細菌が大きく関わっています。その働きを詳しく見ていきましょう。

免疫力の要!

腸は『内なる外』と表現されます。なぜなら、腸は体内にありながら、外界に接しているからです。口から肛門までが一つながりの空洞であることからその意味が理解できるでしょう。このように、外界に接していてかつ、栄養素の吸収を担っている腸は、絶えず外界の微生物や有害物質が体内に侵入する危険にさらされています。そのためわたしたちの体は腸に『最強の免疫器官』としての役割を与えました。体中で免疫を担う細胞の6割がなんと腸に存在するのです。

また、腸内にはパイエル板という、免疫細胞が集まった器官があります。このパイエル板は腸管免疫において司令塔の役割を果たしています。もちろん、腸内細菌も腸の中での免疫に一役買っています。腸内細菌は免疫細胞を活性化させることが近年の研究によりわかってきました。腸内に細菌を持たない無菌のマウスと、通常のマウスを比較すると、通常のマウスのほうが免疫の働きがずっと強く、免疫の司令塔であるパイエル板の大きさも通常マウスのものが大きくなる、という実験結果があります。また、バランスのとれた腸内細菌叢が免疫細胞の活性化につながる、ということもわかってきました。

有害物質の排出

私たちは腸を通して、食物から栄養素を得ています。ご存知のとおり、その残りは便として体外に排出されます。

しかし、便の組成を見てみると、

  • 水分…60%
  • 腸壁細胞の死骸…20%
  • 腸内細菌の死骸…15%
  • 食べ物の残り…5%

と意外にも食べ物の残りは少なく、それよりも腸内細菌の死骸のほうが多いのです。便は腸内の有害物質を吸着して体外に排出することが知られています。腸内細菌を豊富に持つ人のほうが便の量は多くなり、結果的に有害物質を多く体外に排出することができるのです。

便の組成

腸と脳との関連

神経伝達物質というのは、文字通り人間の神経が情報を伝えるときに用いる物質のことです。近年話題となっているのが、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質。これらの神経伝達物質によって幸せや、快楽を感じているとされています。近年の研究により、これらの神経伝達物質が脳だけでなく腸にも存在することがわかってきました。

特にセロトニンに関しては、体内の全量のうち、およそ9割が腸に局在しているとのことです。腸内でつくられたセロトニンが脳へはどれぐらいの影響を及ぼすかははっきりとはわかっていませんが、何らかの良い影響を及ぼすことは想像に難くありません。

そのほか、無菌のマウスと、通常の腸内細菌叢をもつマウスの脳内の代謝物を総合的に解析したところ、脳内に存在する物質が大きく異なるという報告や、自閉症の子どもに多いとされるクロストリジウムという腸内細菌を抑える処理を施したところ、自閉症の症状が改善されたという報告など、腸内細菌と脳内の活動が大きく関連しているということは間違いないでしょう。

通常マウスと無菌マウス

短鎖脂肪酸、各種ビタミンの合成

食物繊維が腸内細菌によって代謝された結果、短鎖脂肪酸というものがつくられます。短鎖脂肪酸には、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあります。近年になって、腸内細菌によって作られる、これら短鎖脂肪酸に様々な機能があることが報告されています。ざっとあげるだけでも、免疫機能の調節、腸壁のバリア機能の強化、腸内のpH低下による病原菌の抑制やミネラルの吸収促進、肥満、糖尿病や、発がんなど、生活習慣病との関連などがあり、短鎖脂肪酸が私たちの健康に大きく関わっていることがわかります。

腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸についての研究は近年始まったばかりで、これからも多くのことが明らかになってくることでしょう。 そのほか、腸内細菌はビタミンKを筆頭に、葉酸、ビタミンB群などの様々なビタミンを作ることが知られています。果たして、腸内細菌が生み出すビタミン類はどの程度私たちの健康に寄与しているのか、は気になるところでしょう。

これについて、無菌の環境で、殺菌済みの餌だけを与え、腸内細菌のいないマウスを育ててみた結果、ビタミンB群、ビタミンKを必ず補ってやらねば生きていけなかった、という報告があります。これはマウスでの実験結果ですが、私たちにとっても腸内細菌がもたらす恩恵というものがいかに大事であるかを示唆する結果と言えるでしょう。

短鎖脂肪酸の効果

腸が悪化すると?

これほど様々な機能を担っている腸。では、腸が悪化するとどうなってしまうのでしょうか? バランスのいい腸内細菌叢のもとでは、乳酸菌などの善玉菌によって乳酸や酪酸などの有機酸がつくられ、有機酸によって腸が刺激され、ぜん動運動により便が排出されます。 しかし、偏った肉食などにより善玉菌が減少すると、腸の働きが低下し、便が停滞してしまいます。これが便秘です。 便秘くらい、どうってことないのでは?と考えておられる方がいるかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。

便秘により便が停滞すると、便をエサに、ウェルシュ菌、クロストリジウムといった、悪玉菌が増殖し、アンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質を発生させます。これらが排出されずにいると、血液中に吸収され、潰瘍や肌荒れ、体臭の悪化などを引き起こします。また、大腸がんや、免疫系の疾患との関連も報告されています。 さらに、これらの有毒物質によって死んだ細胞は、免疫細胞の一種であるマクロファージによって取り除かれますが、細胞を取り除くのに、マクロファージが使用するのは活性酸素です。これにより、腸内の活性酸素が増加し、炎症の原因になるなど、様々な悪影響を及ぼすのです。また、腸内細菌はアレルギー、アトピー性皮膚炎との関連も深いとされています。

簡単に、アレルギー、アトピー性皮膚炎についてお話しましょう。 アレルギー、アトピー性皮膚炎は免疫を担う細胞が作り出す、抗体という物質が関わる疾患です。抗体にはいろいろな種類のものがあります。例えば、ウイルスに対するものや細菌に対するもの(IgA)などがあります。また、そのほかにも花粉やハウスダスト、食品成分に対する抗体(IgE)もあり、実はこのIgEがアレルギーやアトピー性皮膚炎の原因となるのです。

抗体は、「自分ではないもの」を認識して、その「自分ではないもの」を他の免疫細胞に攻撃させたり、炎症を起こしたり(炎症とは本来、病原菌などの異物を排除する反応だと考えられています)して「自分ではないもの」を排除する役目を担っています。しかし、何らかの原因でこの抗体が異常に増殖し、「自分ではないもの」を排除する反応が過剰に起こってしまうことがあります。これがアレルギーです。アレルギーを起こしやすい体質の人は血中のIgEの濃度が高いことが知られています。そしてアトピー性皮膚炎とは、このアレルギー体質に加え、皮膚のバリア機能が弱く、皮膚付近でアレルギー反応が起こってしまう疾患なのです。

ここで、アレルギー、アトピー性皮膚炎と腸内細菌との関係を見ていくことにしましょう。例として、食物アレルギーを挙げてみます。多くの食物アレルギーでは食物に含まれる特有のタンパク質が「自分ではないもの」となり、アレルギーの原因となります。しかし、本来タンパク質はそのほとんどが消化されアミノ酸となって体内に吸収されます。よって通常 は、食物アレルギーが起こることはないのです。

しかし、腸内環境の悪化により、腸壁のバリア機能が弱まり、食物中のタンパク質がアミノ酸に分解される前に吸収されてしまうことがあります。こうなると、血中に移ったタンパク質が、抗体に「自分ではないもの」と見なされ、アレルギーの原因となるのです。このことから腸内細菌叢を整え、腸壁のバリア機能を高めればアレルギーに効果があるとされています。腸内細菌とアレルギーとの関係に関する研究は近年目覚しく進歩しています。腸内細菌の多様性が乏しい乳児にアレルギー体質が多かったといった報告や、ある種の腸内細菌が、過剰な免疫反応を抑止する働きを持つといった報告など、腸内細菌とアレルギーの深い関係を示唆する報告がどんどん発表されています。

腸の悪化がもたらすアレルギー

腸内環境を改善するには?

腸内環境の改善に役立つ栄養素は

  • 食物繊維
  • 抗酸化物質
  • オリゴ糖
  • マグネシウム
  • ω-3系脂肪酸

です。そのうち、野菜から多く取れるものは、

  • 食物繊維
  • 抗酸化物質
  • オリゴ糖

です。以下でその働きを見ていきます。

食物繊維

食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解できない食品成分のことで、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分かれます。

不溶性食物繊維は、その名のとおり水に溶けず、水を吸収してかさを増します。これにより、排便を促すことができます。また、腸にたまった有害物質を吸着して、排出するという効果も期待できるのです。代表的なものに、植物の細胞壁の成分であるセルロース、ヘミセルロースなどがあります。

水溶性食物繊維は、水に溶ける食物繊維のことです。これは有用な腸内細菌のエサになり、腸内細菌のバランスが改善される効果が期待されます。また、水溶性食物繊維が腸内細菌に代謝されることにより、短鎖脂肪酸が作られ、様々な有益な作用をもたらします。代表的なものに、植物の細胞壁が持つペクチン、キクイモに含まれるイヌリンなどがあります。

抗酸化物質

腸の活性酸素による劣化を防ぎます。また、活性酸素によって腸内細菌がダメージを受けることによって腸内細菌のバランスに乱れが生じますが、抗酸化物質はこれを防ぎます。代表的なものに、ニンジンに多く含まれるβ-カロテン、ブドウやブルーベリーに多く含まれるアントシアニンや、トマトに含まれるリコピンなどがあります。

オリゴ糖

オリゴ糖には可消化性のものと難消化性のものがありますが、このうち難消化性のものは。水溶性食物繊維と同じく、腸内細菌に代謝され、短鎖脂肪酸が作られます。これによって腸内細菌のバランスが整えられ、様々な効果があることが知られています。代表的なものに、ヤーコンに多く含まれるフラクトオリゴ糖があります。ヤーコンはオリゴ糖をもっとも多く含む野菜として注目を集めている野菜です。そのほか、ゴボウ、タマネギなどにオリゴ糖が多く含まれています。

マグネシウム

マグネシウムは腸に水分を集め、便通をよくすると言われています。これにより有害物質の排出を促します。マグネシウムは、魚介類や海藻、大豆に多く含まれています。

ω-3系脂肪酸

脂肪酸の構造上の分類の一つです。炎症が起きるとき、ω-6系脂肪酸は、代謝されると炎症の発生を促すプロスタグランジン2、ロイコトリエン4が生成されますが、ω-3系脂肪酸は炎症を穏やかに発生させるプロスタグランジン3、ロイコトリエン5が生成されます。これらの代謝には同じ酵素が関わっており、よってω-3系脂肪酸はω-6系脂肪酸の作用を拮抗的に抑えるとされています。また、ω-3系脂肪酸はレゾルビンやプロテクチンといった、抗炎症性の物質も生成しており、これらのはたらきで、腸内の炎症をおさえることができるとされています。ω-3系脂肪酸は、サバ、サンマなどの青魚や、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイルなどの一部の植物油に多く含まれています。

腸によい生活習慣

腸の大敵はストレスです。近年増加しているのが、ストレスを原因とする過敏性腸症候群という病気です。便秘や腸内の炎症などを引き起こします。また、ストレスにより腸内細菌のバランスも乱れてしまうことがわかってきました。 これを防ぐには、できるだけストレスをためないこと。よく遊び、よく笑ってストレスを発散させることが一番です。また、リラックスした気持ちを生む副交感神経の働きを高めるのも効果的だとされています。それには、あせらずゆっくりした行動が大切です。余裕を持って行動することは精神にも身体にもよい影響をもたらすのです。

まとめ

長々と書いてきましたが… つまりはこういうことです。

  • 水溶性食物繊維、オリゴ糖、抗酸化物質で腸内細菌を元気に!
  • 不溶性食物繊維、マグネシウムで便通を改善!
  • ω-3系脂肪酸は炎症を抑える!
  • ストレスを溜めない生活で腸も元気に!

健康的な腸を手に入れて、身も心も美しくなりましょう。